今回はコンプレッサーのパラメーターについて説明します。
コンプレッサーの基本的な効果を知りたい人は、こちらの記事へどうぞ。
コンプレッサーのパラメーターは、初心者には難しいですね。
コンプレッサーを理解するために、この回では、次の三つのパラメータの説明をします。
この他に、Release(リリース)やMake-Up(メイクアップ/Gainともいう)などのパラメーターがありますが、上の三つが特に大切なので、まずそこを扱います。
使うプラグイン(DAWで使う機能)によって、コンプレッサーの画面や、パラメーターの名前が少し違ったりしますが、基本的には同じです。
今回は、Cubaseに付属しているコンプレッサーを使って
説明したいと思います。
このコンプレッサーですね。
今回扱うのは、赤枠で囲われている部分です。
Threshold(スレッショルド)
スレッショルドは、コンプレッサーで、
この音以上の音量の音にコンプレッサーをかけたい、
という、音のある大きさのことです。
もう少し平たく言うと、
この音量より大きな音を小さくします!
と、と決める”この音量”のことをいいます。
次の波形を見てください。
この波形は、前の部分と後ろの部分で音の大きさが大きく違います。
例えば、前の部分に合わせて、後ろの音の音量を合わせたいとします。
その場合は、前の部分の一番上の音量の部分を、スレッショルドに指定します。
つまり、赤い線のあたりをスレッショルドにします。
スレッショルドの単位は、db(デシベル)なのですが、ここではデシベルの意味が分からなくても平気です。
ちなみに、上の波形では、前の部分の最大音量は、スレッショルドでは、-6.5dbくらいでした。
Threshold(スレッショルド)の決め方
スレッショルドを決める時は、「どの部分を基準にして音量を揃えたいか」をまず決めます。
上は、ひとつ前の「スレッショルド」での説明で使った画像です。
この場合、前半の音の小さな部分を基準にして、後ろの音量を合わせたいということになります。
そしてその上で、楽曲や録音したボーカルをかけながら、次の二つのメーターを見ます。
- IN(入力の音量)
- GR(ゲインリダクション)
INのメーターには、再生している楽曲の音量が出ます。
GRのメーターには、コンプレッサーがどのくらいかかっているかが出ます。
Cubaseのコンプレッサーでは、上の画像の①の赤枠の所が、IN(入力の音量)です。
②の赤枠の部分が、GR(ゲインリダクション/コンプレッサーのかかり具合)です。
先ほどの波形で言えば、前半部分の所をかけながら、INのメーターの一番大きな音量の所あたりをスレッショルドに指定します。
すると、音の大きくなるところで、少しGRのメーターが下に向かって伸びると思います。
メーターが伸びているということはコンプレッサーがかかってしまっています。
ですので、その状態で、GRのメーターが伸びないギリギリの所をスレッショルドに指定します。
こうすることで、スレッショルドが決められます。
スレッショルドを決める上では、「どの音に合わせたいか」は凄く大切です。
自分が聴いていて、バランスが良く聞こえる音を中心にスレッショルドを決めましょう。
Ratio(レシオ)
レシオは、スレッショルドよりも大きな音を、どのくらい小さくするか、ということを示す値です。
これは、単純に分数です。
レシオを1にすると、1/1なので、音は小さくなりません。
レシオを2にすると、1/2なので、音は半分の大きさになります。
レシオを3にすると、1/3になります。
ちなみに∞(無限)に設定すると、スレッショルド以上の音にはなりません。
例えば、この画面では、赤枠の部分のRatio(レシオ)を2.00にしています。
右側の図形は、①の部分がスレッショルドになります。
①の部分から上の音が、図形のように半分(1/2)に抑えられる、という感じになります。
(厳密には1/2にならないのですが、ここでは1/2になると覚えてOKです)
実際に波形で見てみましょう。
左側の波形は、コンプレッサーをかける前です。
赤い線の間の広さを見てください。
コンプレッサーをかけた後の波形が、右側です。
赤い線の間の広さが、大体半分になっていますね。
これが、コンプレッサーのレシオの意味です。
Ratio(レシオ)の決め方
ここでは、ごく簡単に、歌ってみたの録音音源を使った場合を考えます。
レシオは、それぞれの歌い手さんのボーカルによって違います。
それでも、一応セオリーみたいなものがあるので、
紹介しておきます。
大体、女性ボーカルの場合は、レシオは2.00あたりに設定します。
これは、女性の方が声量が大きくないからです。
なので、普通より声量のない(もしくはウィスパーで歌う)方の場合は、もっと小さく設定します。
逆に声量の大きい方の場合は、もっと大きく設定します。
男性ボーカルの場合は声量が大きいので、レシオは、大体2.00~4.00くらいに設定します。
もっと大きく設定することもあります。
Attack(アタック)
アタックは、コンプレッサーのかかりはじめを遅くさせるパラメーターです。
アタックは一番小さくすると、音量がスレッショルドに届いた時に、すぐにコンプレッサーがかかります。
これを、アタックの値を大きくすることで、
かかりはじめを遅くできます。
アタックの単位はms(ミリセカンド)です。
(ミリセカンド=千分の一秒)
図で見てみましょう。
アタックを0msに設定した場合、
①のところですぐにコンプレッサーがかかります。
これを、アタックを少し遅くして、20msにすると、
②のところまでコンプレッサーがかかるのが遅れます。
ではなぜ、コンプレッサーのかかり始めを遅くさせるのでしょうか?
アタックを一番小さくすると、ボーカルの音が平坦になりすぎて、
つまらない音になることがあります。
そうした場合、アタックを少し遅くすることで、
コンプレッサーのかかりがほんの少し遅くなり、
音が活き活きしてきます。
音が少し平坦に聞こえる時、アタックを遅くすることで抑揚を強くすることができます。
逆に、アタックを遅くし過ぎると、ほとんどコンプレッサーがかかっていない状態になるので、注意しましょう。
アタックを遅くすると、当然スレッショルドに届いた音が大きいまま少しすり抜けるので、音量にも違いが出ます。
この波形は、スレッショルドの説明の時に使った音楽を比較したものです。
左側が、アタックを0.1msに設定した場合です。
音は大体レシオで設定した1/2になっていますね。
対して右側は、アタックを20msに設定したものです。
レシオは同じ2ですが、音量が左よりも大きくなっているのが分かります。
アタックでコンプレッサーのかかり始めを遅くしたので、音が少しすり抜けているんですね。
Attack(アタック)の決め方
アタックの決め方は、セオリーのようなものはありません。
楽曲、歌い手の歌い方などによって、変わってきます。
最初のうちは、とりあえずアタックを最速(0や0.1)にしておきましょう。
そして、コンプレッサーをかけた後のボーカルの音が、曲に対して平坦になり過ぎている場合は、少し遅くします。
ちなみに、楽曲が、ロック調や早い曲調のものはアタックは早めになります。
逆にバラードなど、スローテンポなものは、抑揚を伝えるために少し遅くします。
セオリーと言えるのはそのくらいでしょうか。
まとめ
スレッショルドは、この音以上の音量の音にコンプレッサーをかけたい、という、音のある大きさのことです。
スレッショルドを決める時は、どの部分を基準にして音を揃えたいのか、を先に決めましょう。
基準にする音は、楽曲やボーカルの中で、聴いていてバランスが良く気持ちよい所です。
レシオは、スレッショルドより大きい音を、どのくらい小さくするかという割合のことです。
アタックは、指定した分だけ、コンプレッサーのかかり始めを遅くします。
コンプレッサーは、歌ってみたのカラオケMIXでは、あくまでボーカルをどうやって気持ちよく聞かせるかということのために使いましょう。
あまりいじり過ぎて、わけが分からなくならないように、できるだけシンプルにかけるのをオススメします。
「Aメロの音量にサビを合わせるために使う」
みたいな使い方で最初は充分です。
是非、実際にコンプレッサーを使って、試してみてください。
今回も画面はCubaseを使わせて頂きました。
さて、今回はここまでです。次回はコンプレッサーの残りのパラメーターについて説明します。
|
|
|
関連記事


